MSP430F149 - 電力モード

提供: MochiuWiki : SUSE, EC, PCB

概要

電力モードは、マイコンの消費電力を管理するための仕組みである。
アプリケーションの要件に応じて、適切な電力モードを選択することにより、バッテリー駆動のデバイスにおける動作時間を延ばすことができる。

  • アクティブモード
    マイコンがフル機能で動作しているモードである。
    全てのクロックが動作し、CPUと周辺モジュールは通常の速度で動作する。
    消費電力が最も高くなる。

  • 低電力モード
    マイコンの一部の機能を停止または低速化することで、消費電力を抑えるモードである。
    低電力モードにはいくつかのレベルがあり、停止する機能によって分類される。
    一般的に、低電力モードのレベルが上がるほど、消費電力は低くなるが、復帰に時間がかかる場合がある。

  • スリープモード
    CPUを停止して、いくつかの周辺モジュールも停止するモードである。
    割り込みやリセットにより、スリープモードから復帰する。
    低電力モードの一種と考えることができる。

  • ディープスリープモード
    ほとんどの機能を停止して、最小限の消費電力で動作するモードである。
    外部割り込みやリセットにより、ディープスリープモードから復帰する。
    復帰時に、メモリの内容が失われる場合がある。

  • 遷移と復帰
    電力モード間の遷移は、レジスタの設定や特定の命令で行う。
    割り込みやリセットにより、低電力モードからアクティブモードに復帰する。
    復帰時に、停止していた機能を再初期化する必要がある場合がある。


電力モードを効果的に使用するには、アプリケーションの要件を分析、および、必要な機能と応答時間を考慮して、適切なモードを選択する必要がある。
また、割り込みや周辺モジュールの設定を適切に行い、復帰時の処理を正しく実装することが重要である。


MSP430F149の電力モード

  • アクティブモード (AM)
    CPUと全てのクロックが動作しているモードである。
    MCLK、SMCLK、ACLKが動作し、全ての周辺モジュールが使用可能である。
    消費電力が最も高くなる。

  • 低電力モード0 (LPM0)
    CPUとMCLKが停止する。
    SMCLK、ACLK、DCOは動作し続ける。
    周辺モジュールがSMCLKまたはACLKを使用する場合に適している。

  • 低電力モード1 (LPM1)
    CPU、MCLKが停止する。
    DCOのループ制御も無効化される。
    SMCLK、ACLKは動作し続ける。

  • 低電力モード2 (LPM2)
    CPU、MCLK、SMCLKが停止する。
    DCOも停止するが、DCジェネレータは動作し続ける。
    ACLKは動作し続ける。

  • 低電力モード3 (LPM3)
    CPU、MCLK、SMCLK、DCO、DCジェネレータが停止する。
    ACLKのみ動作し続ける。
    リアルタイムクロックやタイマーをACLKでクロッキングする場合に最適。
    消費電力は約0.8µA程度となる。

  • 低電力モード4 (LPM4)
    CPUと全てのクロックが停止する。
    全てのオシレータ(LFXT1、XT2、DCO)が停止する。
    消費電力が最も低くなり、約0.1µA程度となる。
    外部割り込みやリセットでのみ復帰可能。



MSP430F149のクロックシステム

MSP430F149は、Basic Clock Module (BCS)を搭載しており、3種類のクロック信号と3種類のオシレータを提供する。

クロック信号

  • MCLK (Master Clock)
    CPUとシステムで使用される主クロック。
    LFXT1CLK、XT2CLK、DCOCLKから選択可能。
    1、2、4、8の分周が可能。

  • SMCLK (Sub-Main Clock)
    周辺モジュールで使用されるサブシステムクロック。
    DCOCLK、XT2CLKから選択可能。
    1、2、4、8の分周が可能。

  • ACLK (Auxiliary Clock)
    補助クロック。主に低消費電力動作用。
    LFXT1CLKから供給される。(通常は、32768[Hz])
    1、2、4、8の分周が可能。


オシレータ

  • LFXT1 (Low Frequency / High Frequency Crystal Oscillator 1)
    低周波モード:32768[Hz]のウォッチクリスタルを接続。
    高周波モード:450[kHz]〜8[MHz]のクリスタルを接続可能。
    ACLKのソースとして使用される。

  • XT2 (High Frequency Crystal Oscillator 2)
    450kHz〜8MHzのクリスタルまたはレゾネータを接続。
    MCLK、SMCLKのソースとして選択可能。
    高速動作が必要な場合に使用。

  • DCO (Digitally Controlled Oscillator)
    内蔵デジタル制御発振器。
    外部部品不要で動作。
    起動時間が約6µs以下と非常に高速。
    消費電力と起動時間のバランスが良い。
    キャリブレーションデータによりソフトウェアで周波数調整が可能。



電力モードの設定

状態レジスタ (SR) を使用する場合

状態レジスタ (Status Register, SR) は、マイコンの現在の状態を示すレジスタである。
MSP430マイコン全般では、SRは16ビットのレジスタであり、各ビットが特定の状態を表している。

電力モードに必要な各ビットについて、以下に示す。

  • CPUの停止 (4ビット目)
    SRのCPUOFFビットを1にする。

  • オシレータの停止 (5ビット目)
    SRのOSCOFFビットを1にする。

  • システムクロックジェネレータ (DCOのDCジェネレータ) の停止 (6ビット目)
    SRのSCG0ビットを1にする。

  • システムクロックジェネレータ (DCO、SMCLK) の停止 (7ビット目)
    SRのSCG1ビットを1にする。


__bis_SR_register()関数を使用する場合

__bis_SR_register関数を使用して、状態レジスタ (SR) の該当ビットを1にする。

ただし、割り込みが発生すると、省電力モードから復帰する。
省電力モードを使用する場合は、必要なクロックと周辺モジュールを適切に設定して、不要なものは停止させることが重要である。
また、割り込みを適切に設定して、省電力モードから復帰できるようにする必要がある。

 // LPM3に移行
 __bis_SR_register(LPM3_bits + GIE);  // 割り込み有効化とともにLPM3へ


各電力モードの設定例

 // LPM0への移行
 __bis_SR_register(LPM0_bits + GIE);
 
 // LPM1への移行
 __bis_SR_register(LPM1_bits + GIE);
 
 // LPM2への移行
 __bis_SR_register(LPM2_bits + GIE);
 
 // LPM3への移行(リアルタイムクロック動作時に最適)
 __bis_SR_register(LPM3_bits + GIE);
 
 // LPM4への移行(最小消費電力)
 __bis_SR_register(LPM4_bits + GIE);



電力モードからの復帰

低電力モードからアクティブモードへの復帰は、以下に示す方法で行われる。

  • 割り込みによる復帰
    有効な割り込みが発生すると、自動的にアクティブモードに復帰する。
    割り込みサービスルーチン (ISR) を実行後、元のコードに戻る。
    ISR内でSRのビットをクリアすることで、復帰後もアクティブモードを維持できる。

  • リセットによる復帰
    リセット信号により、マイコンは初期状態に戻る。

  • 復帰時間
    DCOを使用する場合、LPM3またはLPM4からの復帰時間は約6µs以下と非常に高速。
    外部クリスタル(XT2)を使用する場合は、発振安定化のため復帰に時間がかかる場合がある。