VPN - PrivadoVPN
概要
PrivadoVPNは、スイスのツッグに本社を置くVPNサービスであり、2019年にPrivado Networks AGによって設立された。
エンタープライズ向けサービスは2019年4月、コンシューマー向けサービスは2019年12月に開始された。
スイスを拠点とすることで、EU圏外のデータ保護法 (スイス連邦データ保護法: FADP) の適用を受けており、5/9/14 Eyes (情報共有協定) の加盟国に属さないことが特徴である。
PrivadoVPNは、無料プランを提供している数少ないVPNサービスのひとつであり、月間10[GB]のデータ通信量と10カ国のサーバが無料で利用できる。
無料プランのデータ上限を超過した場合も、約1[Mbps]の低速接続 (Lite Mode) で継続して利用できる点が他社との差別化ポイントとなっている。
PrivadoVPNは、以下に示す主な特徴がある。
| 特徴 | 説明 |
|---|---|
| 無料プラン | 月間10[GB]の高速データ通信と10カ国のサーバが無料で利用可能。 データ超過後はLite Mode (約1[Mbps]) で継続して接続できる。 |
| ノーログポリシー | ブラウジング履歴、トラフィック宛先、データ内容、ユーザIPアドレス、DNSクエリを記録しない。 |
| スイス拠点 | スイス連邦データ保護法 (FADP) の保護を受け、5/9/14 Eyes の管轄外である。 |
| キルスイッチ | VPN接続が切断された場合に自動でネットワーク通信を遮断して、IPアドレスの漏洩を防ぐ。 |
| スプリットトンネリング | 特定のアプリやサイトのみVPNを経由させることができる。 |
| 広告ブロッカー | 広告や追跡スクリプトをブロックするフィルタリング機能を内蔵している。 |
| SOCKS5プロキシ | Torrentクライアント向けにSOCKS5プロキシを提供している。 60以上のグローバルプロキシサーバを選択できる。 |
| ストリーミング対応 | Netflix、Hulu、Amazon Prime Video等の主要ストリーミングサービスに対応している。 |
| 同時接続台数 | 有料プランでは最大10台のデバイスを同時に接続できる。 |
| 30日間返金保証 | 有料プランに加入後30日以内であれば全額返金を受けることができる。 |
デメリットとしては、以下に示すことが挙げられる。
- 第三者による独立したセキュリティ監査が未実施であり、透明性レポートも公開されていない。
- サーバ数が338〜377台と他の主要VPNと比較して限定的である。
- ストリーミングサービス利用時にIPアドレスがブロックされる事例が報告されている。
- Lite Modeの速度は約1[Mbps]であり、動画視聴等の用途には不向きである。
- 公式Linux向けアプリが提供されていないため、Linux環境での利用には手動設定が必要となる。
- カスタマーサポートは主に英語対応であり、日本語サポートは提供されていない。
| プラン | 料金 | 接続台数 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 無料 | 無料 | 1台 | 月間10[GB]、10カ国のサーバ、Lite Mode対応 |
| 1ヶ月プラン | $10.99/月 | 10台 | 無制限データ通信、全サーバ利用可能 |
| 1年プラン | $3.99/月 (年払い) | 10台 | 無制限データ通信、全サーバ利用可能 |
| 2年プラン | $1.99/月 (2年払い) | 10台 | 無制限データ通信、全サーバ利用可能 |
| 地域 | 国 |
|---|---|
| ヨーロッパ | 英国、オランダ、ドイツ、フランス |
| 北米 | 米国、カナダ、メキシコ |
| 南米 | ブラジル、アルゼンチン |
| アジア | インド |
ノーログポリシーの実態
公式ノーログポリシーの内容
PrivadoVPNは、厳格なノーログポリシーを公式に掲げており、ユーザのプライバシーを保護するために以下の情報を記録しないと明言している。
| 記録しない情報 | 記録する情報 |
|---|---|
| ブラウジング履歴 (アクセスしたWebの記録) | メールアドレス (アカウント作成・管理のため) |
| トラフィックの宛先(接続先のIPアドレスやドメイン) | 帯域幅の使用量 (無料プランのデータ制限管理のため) |
| データ内容(通信の中身) | |
| ユーザの実IPアドレス | |
| DNSクエリ(DNS検索の記録) |
なお、帯域幅の使用量の記録は無料プランのデータ制限 (月間10[GB]) を管理するための技術的な必要性によるものであり、VPNの利用内容とは紐付けられていないとしている。
第三者監査の状況
PrivadoVPNは、2026年3月現在において第三者機関による独立したセキュリティ監査を実施していない。
公開された監査レポートも存在しない。
主要なVPNプロバイダの多くが定期的な第三者監査を実施してノーログポリシーの有効性を客観的に証明しているのに対して、PrivadoVPNはノーログポリシーを自己申告のみで主張している状況である。
また、透明性レポート (政府機関や法執行機関からの情報提供要請件数を公開する文書) も確認されておらず、外部からの検証手段が限られていることは留意が必要である。
技術的なプライバシー保護
PrivadoVPNは、ノーログポリシーを支える技術的な仕組みとして以下を採用している。
- AES-256ビット暗号化
- 業界標準の最高レベルの暗号化方式を採用している。
- 対応プロトコル
- WireGuard、OpenVPN、IKEv2/IPSecの3つのプロトコルに対応している。
- WireGuardは高速かつ軽量なプロトコルであり、モバイル端末での利用に適している。
- キルスイッチ
- VPN接続が予期せず切断された場合に、自動的にインターネット接続を遮断してIPアドレスの漏洩を防ぐ機能である。
- 無料プランでも利用できる。
- DNS漏洩防止
- VPN接続中はPrivadoVPN独自のDNSサーバを使用し、ISP (インターネットサービスプロバイダ) へのDNSクエリの漏洩を防ぐ。
- スプリットトンネリング
- 特定のアプリやウェブサイトをVPNトンネルの外で通信させることができる機能である。
- バンキングアプリ等、VPN経由でのアクセスが問題になる場合に有用である。
管轄法域に関する考慮事項
PrivadoVPNはスイスのツッグに拠点を置いており、スイスの法律の適用を受ける。
スイスの法的環境として、以下に示す事柄が挙げられる。
- FADP (スイス連邦データ保護法) の保護
- スイスは独自のデータ保護法であるFADP (Federal Act on Data Protection) により、個人データの収集・処理に厳格な制限を設けている。
- EUのGDPRと同等以上のデータ保護水準を持つとされている。
- 5/9/14 Eyes 非加盟
- スイスは、米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドを中心とする情報共有協定 (5/9/14 Eyes) の加盟国ではない。
- 加盟国の情報機関からの情報共有要請に自動的に応じる義務を持たない。
- 第三者からの情報請求への対応
- スイス法の規定により、PrivadoVPNはユーザの情報を第三者に提供する場合、当該ユーザへの通知義務を負うとされている。
- ただし、裁判所命令等の法的根拠に基づく情報提供要請に対しては応じる可能性がある。
他のノーログVPNとの比較
| 項目 | PrivadoVPN | Mullvad | ProtonVPN |
|---|---|---|---|
| 拠点 | スイス | スウェーデン | スイス |
| 第三者監査 | 未実施 | 定期実施 (Cure53等) | 実施済み |
| 透明性レポート | 非公開 | 重大事件のみ公開 | 定期公開 |
| 無料プラン | あり (10[GB]/月) | なし | あり (無制限・低速) |
| 匿名支払い | 限定的 | 現金、Monero等対応 | 暗号通貨対応 |
| Linux公式アプリ | なし | あり | あり |
| 5/9/14 Eyes | 非加盟 | 加盟 (スウェーデン) | 非加盟 |
留意点
- 第三者監査が未実施であるため、ノーログポリシーの有効性を客観的に検証する手段が現時点では存在しない。
- スイスはプライバシー保護の観点で有利な法域であるが、スイス法に基づく適法な情報提供要請には応じる可能性がある。
- 透明性レポートが公開されていないため、政府機関等からの情報提供要請件数を確認する方法がない。
- 高度なプライバシー要件を持つユーザは、第三者監査を実施済みのVPNサービスと比較検討することを推奨する。
PrivadoVPNの契約方法
PrivadoVPNの契約手順を以下に記載する。
- PrivadoVPNの公式Webサイトへアクセスして、ページ上部の[Get PrivadoVPN]または[Start for Free]を選択する。
- プランを選択する。
無料プランを利用する場合は[Free]を選択、有料プランを利用する場合は希望のプランを選択する。 - メールアドレスを入力してアカウントを作成する。
- 登録したメールアドレスは、アカウント管理および重要な通知に使用されるため、正確に入力すること。
- 有料プランを選択した場合は、クレジットカード、PayPal等の支払い方法を選択して決済を行う。
- PrivadoVPNのダウンロードページにアクセスして、使用するOSに対応したアプリをダウンロードする。
- Windows、MacOS、iOS、Androidに対応している。
- アプリをインストールして、登録したメールアドレスとパスワードでログインする。
- 接続したいサーバを選択して、[Connect]ボタンを押すとVPN接続が開始される。
PrivadoVPNの有料プランは、最安で$1.99/月 (2年プラン) から利用できる。(2026年3月現在)
有料プランには30日間の返金保証が付いており、期間内であれば全額返金を受けることができる。
無料プランはクレジットカード情報の登録なしで利用でき、月間10[GB]のデータ通信量が提供される。
データ上限を超過した場合は、約1[Mbps]の低速接続 (Lite Mode) に自動的に切り替わり、接続自体は維持される。
VPN over Tor
VPN over Torとは、Torネットワークを経由した上でVPNに接続する構成のことである。
この構成では、VPNプロバイダに対してもユーザの実IPアドレスを隠すことができる。
PrivadoVPNは、VPN over Torを公式にはサポートしていない。
ただし、SOCKS5プロキシを提供しており、主にTorrentクライアント向けの用途で提供されている。
SOCKS5プロキシの詳細
下表に、PrivadoVPNが提供するSOCKS5プロキシの仕様を示す。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| プロキシサーバ | proxy.privado.io |
| ポート番号 | 1080 |
| 認証 | 必要 (ユーザ名、パスワード) |
| プロキシ数 | 60以上のグローバルプロキシ |
| 主な用途 | Torrentクライアントでの匿名ダウンロード |
SOCKS5プロキシに対応したTorrentクライアントの例として、以下に示すものが挙げられる。
- qBittorrent
- uTorrent
- BitComet
SOCKS5プロキシはVPNトンネルとは異なり、全ての通信を暗号化するものではなく、対応したアプリケーションの通信のみをプロキシ経由でルーティングする仕組みである。
そのため、SOCKS5プロキシ単体はVPN over Torとしての機能を完全には提供しない。
VPN over Tor構成を必要とする場合は、Torネットワークへの接続設定を手動で行った上でVPN接続を確立する必要があり、技術的な難易度が高い。
高度なプライバシー要件を持つ用途には、VPN over Torを公式にサポートするサービスの利用を推奨する。
Tor over VPN
Tor over VPNとは、まずVPNに接続した上でTorネットワークを使用する構成のことである。
この構成では、ISP (インターネットサービスプロバイダ) に対してTorの利用を隠すことができ、またTorの入口ノードに対してもユーザの実IPアドレスを隠すことができる。
PrivadoVPNは、Tor over VPNを公式にはサポートしていない。
しかし、理論的には以下の手順で実現することができる。
- PrivadoVPNアプリを起動して任意のサーバに接続する。
- VPN接続が確立された状態で、Torブラウザを起動して利用する。
この方法では、PrivadoVPNを経由した上でTorネットワークに接続するため、ISPからはTorの利用が隠される。
ただし、VPNプロバイダであるPrivadoVPNは、ユーザがTorを使用していることは認識できる状態となる点に注意が必要である。
Torブラウザは Tor Projectの公式Webサイト から無料でダウンロードできる。
Tor over VPN構成を利用する場合の留意点を以下に示す。
- Torネットワーク経由の通信は通常よりも大幅に速度が低下する。
- VPNとTorを組み合わせることにより、複数のレイヤーで保護されるが、完全な匿名性を保証するものではない。
- PrivadoVPNの公式サポート対象外の構成であるため、技術的な問題が発生した場合のサポートを受けることができない。