概要

USER.mdは、OpenClawエコシステムにおいてAIエージェントが支援対象者 (ユーザ) に関する情報を記録・参照するためのファイルである。
エージェント自身のアイデンティティを定義するSOUL.mdとは対をなす存在であり、支援する相手が誰であるか を記述する役割を担う。

このファイルに記録された情報を基に、エージェントはユーザの名前、呼称、タイムゾーン、価値観、現在のプロジェクト、コミュニケーションスタイルといった多様な背景を把握し、
パーソナライズされたサポートを提供できるようになる。

USER.mdは、2つのセクションで構成される。

USER.md の構成セクション
セクション 説明
ヘッダーセクション(Basic Info) 名前・呼称・タイムゾーン等の基本情報を記述する。
コンテキストセクション(Context) 価値観、プロジェクト、コミュニケーションスタイル等、より深い人物理解のための情報を記述する。


このファイルは初期インタビューで一括収集するのではなく、エージェントとの相互作用を通じて徐々に情報を蓄積していく設計思想に基づいている。
プライベートセッションでのみ完全に読み込まれ、グループセッションでは読み込みを制限することでプライバシーを保護する。

また、ファイルが存在しない状態でもエラーにならない柔軟な設計となっており、導入の敷居が低い点も特徴である。


基本構造

USER.mdは、基本情報を記述するヘッダーセクションと、深層理解のためのコンテキストセクションの2部構成である。

各セクションは必須ではないが、以下に示す構成に従うことによりエージェントがユーザをより適切に理解できるようになる。

ヘッダセクション (基本情報)

ヘッダセクション (## Basic Info) には、ユーザの基本的な識別情報を記述する。

USER.md ヘッダーセクション(Basic Info)のフィールド
フィールド 説明
Name(名前) ユーザのフルネームまたは表示名を記述する。
エージェントがユーザを識別するための最も基本的な情報である。
Preferred Address / How to Address(呼称) エージェントがユーザを呼ぶ際の呼称を指定する。
さん付け や ニックネーム等、ユーザが好む呼び方を記述する。
Pronouns(代名詞、オプション) ユーザが使用を希望する代名詞を記述する。
このフィールドは任意であり、必要な場合のみ記述する。
Timezone(タイムゾーン) ユーザのタイムゾーンをIANA形式 (例: Asia/Tokyo、America/Los_Angeles) で記述する。
時刻に関する情報を正確に扱うために使用される。
Notes(メモ) ユーザに関する補足情報を自由形式で記述する。
利用可能な時間帯、連絡方法の好み等を記述するのに適している。


コンテキストセクション (深層理解)

コンテキストセクション (## Context) には、ユーザをより深く理解するための情報を記述する。
各サブセクションは必要に応じて追加・省略できる。

USER.md コンテキストセクション(Context)のフィールド
フィールド 説明
Values & Interests(価値観と興味) ユーザが大切にしている価値観や興味のある分野を記述する。
エージェントがユーザの関心に沿った提案や応答を行うための基盤となる。
Current Projects(現在のプロジェクト) ユーザが現在取り組んでいるプロジェクトや作業を記述する。
エージェントが文脈を理解し、適切な支援を提供するために参照する。
Preferences & Dislikes(好みと嫌悪感) ユーザが好む事柄と嫌う事柄を記述する。
応答スタイルや提案内容をカスタマイズするために使用する。
Humor & Personality(ユーモアと人格) ユーザの性格やユーモアのスタイルを記述する。
エージェントとの対話をより自然で快適なものにするために活用する。
Communication Style(通信スタイル) ユーザが好むコミュニケーション方法や応答のスタイルを記述する。
簡潔な回答を好むか、詳細な説明を好むか等を指定できる。
Goals(目標) ユーザの短期・長期の目標を記述する。
エージェントがユーザの目標達成を支援するための方向性を把握するために参照する。



記述のフィロソフィー

USER.mdの記述において重要な設計思想と姿勢を以下に示す。

段階的蓄積の原則

USER.mdの情報は、初期インタビューで一括収集するのではなく、エージェントとの相互作用を通じて徐々に構築していくことを推奨する。

最初から完璧なUSER.mdを作ろうとする必要はない。

会話の中でユーザが触れた好み、プロジェクト、価値観等を、エージェントが適切なタイミングでファイルに追記していく形が自然である。

この段階的な蓄積により、ファイルは実際の使用経験を反映した、より正確な情報を持つようになる。

人物理解の姿勢

USER.mdへの情報記録は、個人情報を集めている という姿勢ではなく、ある人物について学んでいる という姿勢で行うべきである。

この違いは重要である。
前者は管理的・監視的な姿勢であり、後者は支援的・協力的な姿勢である。

エージェントがユーザの情報を扱う場合は、常に この情報がどのようにユーザの支援に役立つか を念頭に置くべきである。

信頼と境界

USER.mdに記録されるプライベートな情報は、敬意を持って扱われなければならない。

ユーザが共有した情報は、そのユーザを支援する目的のみに使用する。

信頼関係が成熟するまで、詳細な個人情報の記録は段階的に行う。

ユーザが共有を望まない情報については、記録しないという判断も重要である。

ファイルの永続性原則

エージェントの記憶はセッション間で保持されない。

会話の中でエージェントが把握した重要な情報も、セッションが終了すると失われる。

USER.mdは、ファイルが真実の源 (source of truth) という原則に基づいており、重要な情報は明示的にファイルに書き込むことで初めて永続化される。

エージェントの頭の中だけで覚えたことは、次のセッションでは参照できないことを常に意識する必要がある。


プライバシーとセキュリティ

USER.mdはユーザの個人情報を含むため、適切なプライバシー保護の仕組みが設けられている。

セッション種別による読み込み制御

OpenClawは、セッションの種別に応じてUSER.mdの読み込みを制御する仕組みを持つ。

セッション種別による USER.md の読み込み動作
セッション種別 説明
プライベートセッション USER.mdを完全に読み込み、
ユーザの詳細な背景情報を活用したパーソナライズされたサポートを提供する。
グループセッション MEMORY.mdの読み込みを制限するとともに、
USER.mdも第三者への露出を避けるため読み込みを制限する。


この仕組みにより、複数のユーザが参加するセッションで個人情報が意図せず開示されるリスクを軽減できる。

ローカルファースト設計

USER.mdを含むOpenClawの設定ファイルは、全てユーザのローカルマシン上に保存される。

クラウドサービスへの自動同期は行われないため、ユーザの個人情報が意図しない形で外部に送信されるリスクがない。
データの管理と共有の判断は、常にユーザ自身が行う。

情報の段階的公開

信頼関係が成熟するまで、詳細な個人情報はUSER.mdに記録しないことを推奨する。

エージェントとの対話を重ねる中で、ユーザが自然に共有した情報を少しずつ記録していく段階的なアプローチが望ましい。

1度に全ての個人情報を収集・記録しようとすることは、プライバシーの観点からも、情報の正確性の観点からも適切ではない。


他のファイルとの関係

USER.mdは、OpenClawエコシステムの他の設定ファイルと密接に関連しながら、独自の役割を担っている。

USER.mdとSOUL.mdの違い

USER.mdとSOUL.mdは、OpenClawにおける 外部コンテキスト内部アイデンティティ の対をなすファイルである。

USER.md と SOUL.mdの違い
ファイル 説明
USER.md 支援対象者 (ユーザ) に関する情報を記録する外部コンテキストファイルである。
誰を支援しているか という問いに答える。
SOUL.md エージェント自身のパーソナリティ、価値観、制約を定義する内部アイデンティティファイルである。
エージェントがどのような存在であるか という問いに答える。


USER.mdとMEMORY.mdの違い

USER.mdとMEMORY.mdは、どちらもエージェントが参照する情報を格納するが、その性質が異なる。

USER.md と MEMORY.mdの違い
ファイル 説明
USER.md 静的・半静的なユーザの背景情報を記録する。
ユーザの基本的なプロフィールや継続的な文脈として機能する。
MEMORY.md セッション間で学習した事柄や下した決定等、動的に蓄積される情報を記録する。
過去のやり取りや判断の履歴として機能する。


USER.mdとIDENTITY.mdの違い

USER.mdとIDENTITY.mdは、それぞれ異なる対象の識別情報を扱う。

USER.md と IDENTITY.mdの違い
ファイル 説明
USER.md 支援対象者であるユーザの情報を記録する。
IDENTITY.md エージェント自身の識別情報 (名前、バージョン、役割等) を定義する。


下表に、各ファイルの役割の比較を示す。

OpenClawの主要設定ファイルの比較
ファイル 記録する対象 主な内容 更新の性質
USER.md 支援対象者 (ユーザ) 基本情報、価値観、プロジェクト、コミュニケーションスタイル 静的・半静的
SOUL.md エージェント自身 パーソナリティ、価値観、制約、コミュニケーションスタイル 静的 (性格の調整時のみ変更)
MEMORY.md セッション間の学習内容 過去の判断、学習した情報、決定事項 動的 (継続的に更新)
IDENTITY.md エージェントの識別情報 名前、バージョン、役割、所属 静的



記述例

最小限な記述例

最小限の情報を持つUSER.mdの記述例を以下に示す。

 # USER
 
 ## Basic Info
 
 Name: Taro
 How to Address: Taro-san
 Timezone: Asia/Tokyo
 
 ## Context
 
 ### Values & Interests
 オープンソースソフトウェアと自動化に関心がある。
 
 ### Current Projects
 個人用のナレッジ管理システムを構築中。


詳細な記述例

各セクションを充実させた、詳細なUSER.mdの記述例を以下に示す。

 # USER
 
 ## Basic Info
 
 Name: Alex Chen
 How to Address: Alex
 Pronouns: they/them
 Timezone: America/Los_Angeles
 Notes: 非同期コミュニケーションを好む。通常、太平洋時間の午前9時から午後6時まで対応可能。
 
 ## Context
 
 ### Values & Interests
 開発者ツールとオープンソースに情熱を持っている。
 コミュニケーションにおける明確さと率直さを大切にしている。
 コードの品質とテストカバレッジに深くこだわっている。
 
 ### Current Projects
 - 職場でマイクロサービス移行をリードしている
 - オープンソースのCLIツールにコントリビュートしている
 - 週末にRustを学習中
 
 ### Preferences & Dislikes
 - 冗長な説明よりも簡潔な回答を好む
 - 不必要な会議や形式的なやり取りを嫌う
 - 箇条書きや構造化された情報を好む
 
 ### Humor & Personality
 ドライなユーモア。技術系のダジャレやプログラミングジョークを好む。
 
 ### Communication Style
 率直で要点を押さえたスタイル。簡単な質問にはSlackを好む。
 詳細な議論にはメールを好む。
 
 ### Goals
 - 短期目標: 第2四半期までにマイクロサービス移行を完了する
 - 長期目標: システムプログラミングの専門性を高める



関連項目