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オペアンプ - ボルテージフォロワ
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== 概要 == ボルテージフォロワは、オペアンプの出力と反転入力端子を直接接続し、非反転入力端子に入力信号を加えることで、入力電圧と等しい出力電圧を得る回路構成である。<br> <br> この回路は、100[%]の負帰還 (帰還率 β = 1) により、電圧利得が1倍 (0 [dB]) となる。<br> 位相反転は発生せず、入力信号がそのまま出力される。<br> <br> ボルテージフォロワの最大の特徴は、極めて高い入力インピーダンス (理想値は無限大、実際には数[MΩ]〜数百[GΩ]) と、極めて低い出力インピーダンス (理想値は0[Ω]、実際には数[Ω]〜数十[Ω]) を持つことである。<br> この特性により、インピーダンス変換器として機能し、高インピーダンス信号源から低インピーダンス負荷へ信号を伝達する際に、信号源に負担をかけずに駆動できる。<br> <br> [[ファイル:Voltage Follower 1.png|500px|フレームなし|中央|ボルテージフォロワの回路図]] <br> 主な応用例を以下に示す。<br> * センサ回路のバッファ (ピエゾセンサ、pHセンサ) * ADコンバータの前段回路 * アクティブフィルタの出力段 * オーディオ回路 (プリアンプ、ヘッドフォンアンプ) * 精密電圧源の低インピーダンス化 <br><br> == 別名 == ボルテージフォロワは、用途や強調する特性により、様々な名称で呼ばれる。<br> <br> 代表的な別名を以下に示す。<br> <br> * ユニティゲインバッファ (Unity Gain Buffer) *: 電圧利得が1倍 (0 [dB]) であることを強調する呼び方 * バッファアンプ (Buffer Amplifier) *: 信号のバッファリング機能を強調する呼び方 * インピーダンス変換器 (Impedance Converter) *: 高インピーダンスから低インピーダンスへの変換機能を強調する呼び方 * ボルテージバッファ (Voltage Buffer) *: 電圧バッファリングを表す汎用的な呼び方 * 電圧フォロワ *: 日本語での標準的な呼び方 <br> これらの名称は、全て同一の回路構成を指す。<br> 文脈に応じて適切な名称が使用される。<br> <br><br> == 動作原理 == ==== 回路構成 ==== ボルテージフォロワは、以下の接続により構成される。<br> <br> * 非反転入力端子 (+) に入力信号 Vin を接続 * 反転入力端子 (-) と出力 Vout を直接接続 (100[%]負帰還) * 電源は正負電源または単電源 <br> この構成により、出力電圧が反転入力端子に全て帰還されるため、帰還率 β = 1 となる。<br> <br> ==== 理想オペアンプの仮定 ==== ボルテージフォロワの動作を理解するには、理想オペアンプの2つの仮定が重要である。<br> <br> * 仮定1 : イマジナリーショート (仮想短絡) *: オペアンプの開ループゲインが無限大に近いため、負帰還がかかった状態では、非反転入力端子 (+) と反転入力端子 (-) の電位差がほぼゼロになる。 *: このため、V+ と V- がほぼ等しい電位になる。 *: <br> * 仮定2 : 入力電流がゼロ *: オペアンプの入力インピーダンスが無限大であるため、2つの入力端子から流れ込む電流はほぼゼロである。 *: このため、入力端子は信号源に電流を流さない。 <br> これらの仮定により、ボルテージフォロワは理想的なバッファとして動作する。<br> <br> ==== ゲインの導出 ==== ボルテージフォロワのゲインが1倍 (0 [dB]) になることを、オペアンプの基本式から導出する。<br> <br> オペアンプの基本式は以下の通りである。<br> <br> <math>\mbox{Vout} = A \times (V+ - V-)</math> <br> ここで、<br> * A *: オペアンプの開ループゲイン (通常、10<sup>4</sup>〜10<sup>6</sup>) * V+ *: 非反転入力端子の電圧 * V- *: 反転入力端子の電圧 * Vout *: 出力電圧 <br> ボルテージフォロワの接続条件は以下の通りである。<br> <br> <math> \begin{aligned} \mbox{V+} &= \mbox{Vin} \\ \mbox{V-} &= \mbox{Vout} \end{aligned} </math> <br> これを基本式に代入すると、<br> <math> \begin{aligned} \mbox{Vout} &= \mbox{A} \times (\mbox{Vin} - \mbox{Vout}) \\ \mbox{Vout} &= \mbox{A} \times \mbox{Vin} - \mbox{A} \times \mbox{Vout} \\ \mbox{Vout} + \mbox{A} \times \mbox{Vout} &= \mbox{A} \times \mbox{Vin} \\ \mbox{Vout} \times (1 + \mbox{A}) &= \mbox{A} \times \mbox{Vin} \\ \mbox{Vout} &= \dfrac{\mbox{A}}{(1 + \mbox{A})} \times \mbox{Vin} \end{aligned} </math> <br> 開ループゲインAが無限大に近づくとき、<br> <br> <math> \begin{aligned} \mbox{Vout} &= \dfrac{\mbox{A}}{(1 + \mbox{A})} \times Vin \\ &\longrightarrow \dfrac{A}{A} \times \mbox{Vin} \\ &= \mbox{Vin} \end{aligned} </math> <br> したがって、<br> <br> <math>\mbox{Vout} = \mbox{Vin} \quad \cdots \quad </math> ゲインは、1 <br> この導出により、ボルテージフォロワのゲインが1倍であることが数学的に証明される。<br> <br> ==== 非反転増幅回路との関係 ==== ボルテージフォロワは、非反転増幅回路の特殊ケースとして理解できる。<br> <br> 非反転増幅回路のゲイン式は以下の通りである。<br> <br> <math>\mbox{Av} = 1 + \dfrac{\mbox{R2}}{\mbox{R1}}</math> <br> ここで、<br> * R1 *: 反転入力端子とグランド間の抵抗 * R2 *: 反転入力端子と出力間の抵抗 (フィードバック抵抗) * Av *: 電圧利得 <br> ボルテージフォロワは、フィードバック抵抗 R2 = 0 (直接接続) の特殊ケースである。<br> <br> <math>\mbox{Av} = 1 + \dfrac{0}{\mbox{R1}} = 1</math> <br> この時、<u>帰還率 β = 1</u> となる。<br> <br> 非反転増幅回路の抵抗を以下のように変化させると、<br> * R2 = 0[Ω] の時 *: ボルテージフォロワ (Av = 1) * R2 > 0 の時 *: 非反転増幅回路 (Av > 1) <br> このように、ボルテージフォロワは非反転増幅回路の最もシンプルな形態である。<br> <br><br> == ボルテージフォロワの特徴 == ==== 入力インピーダンス ==== ボルテージフォロワの入力インピーダンスは、理想的には無限大である。<br> <br> 実際のオペアンプでは、以下の範囲の入力インピーダンスを持つ。<br> * バイポーラトランジスタ入力オペアンプ : 数[MΩ]〜数十[MΩ] *: 例: LM358 (約2 [MΩ]) * FET入力オペアンプ : 数百[MΩ]〜数百GΩ *: 例: TL072 (1[TΩ]以上、1[TΩ]近く) <br> この極めて高い入力インピーダンスにより、以下に示すメリットが得られる。<br> * 信号源に電流をほとんど流さない * 高インピーダンスセンサからの信号を歪ませずに取得できる * 分圧抵抗の出力電圧を変化させずに取得できる <br> 高インピーダンスセンサの例を以下に示す。<br> * ピエゾセンサ (数[MΩ]〜数GΩ) * pHセンサ (数百[MΩ]) * イオン選択電極 (数百[MΩ]) <br> ==== 出力インピーダンス ==== ボルテージフォロワの出力インピーダンスは、理想的には0[Ω]である。<br> <br> 実際のオペアンプでは、以下の範囲の出力インピーダンスを持つ。<br> * 汎用オペアンプ: 数[Ω]〜数十[Ω] * 高精度オペアンプ: 数[Ω]〜十数[Ω] <br> この極めて低い出力インピーダンスにより、以下に示すメリットが得られる。<br> * 負荷に大きな電流を流せる。 * 負荷インピーダンスの変化による出力電圧の変動が小さい。 * 複数の負荷に信号を分配できる。 <br> 出力インピーダンスが低いことにより、以下の回路を駆動できる。<br> * ADコンバータ (入力インピーダンス: 数[kΩ]〜数十[kΩ]) * ケーブル (容量性負荷) * 後段の増幅回路 <br> ==== その他の特徴 ==== ボルテージフォロワは、以下の特徴を持つ。<br> <br> <center> {| class="wikitable" |+ ボルテージフォロワの主要特性 |- ! 項目 !! 特性・説明 |- | 電圧利得 | * 1 V/V (0 [dB]) * 入力信号が増幅されずにそのまま出力される |- | 位相シフト | * 0° (位相反転なし) * 入力信号と出力信号の位相が一致する |- | 周波数帯域 | * ゲインが1倍であるため、オペアンプのGB積 (ゲイン帯域幅積) とほぼ等しい周波数帯域を持つ * 例: TL072 (GB積 = 3 MHz) の場合、約3 MHzまでの信号に対応 |} </center> <br> これらの特徴により、ボルテージフォロワは信号の増幅を行わず、インピーダンス変換のみを行う理想的なバッファとして機能する。<br> <br><br> == 代表的なオペアンプIC == ボルテージフォロワ回路で使用される代表的なオペアンプICを用途別に紹介する。<br> <br> ==== オペアンプICの特性比較 ==== <center> {| class="wikitable" |+ 汎用オペアンプの特性比較 |- ! オペアンプ !! 項目 !! 仕様・説明 |- | rowspan="7" | TL072/TL074 | 型式 || Dual/Quad FET入力オペアンプ |- | GB積 || 3 [MHz] |- | 入力インピーダンス || 10¹²[Ω]以上 (1 [TΩ]近く) |- | スルーレート || 13 [V/µs] |- | 入力オフセット電圧 || ±3 [mV] |- | 入力バイアス電流 || ±30 [pA] |- | 用途 || オーディオ応用、低ノイズが必要な回路、高インピーダンスセンサのバッファ |- | rowspan="8" | LM358/LM324 | 型式 || Dual/Quad バイポーラ入力オペアンプ |- | GB積 || 1 [MHz] |- | 入力インピーダンス || 約2 [MΩ] |- | スルーレート || 0.5 [V/µs] |- | 入力オフセット電圧 || ±5 [mV] |- | 入力バイアス電流 || ±50 [nA] |- | 電源電圧 || 3[V]〜32[V] (単電源動作可能) |- | 用途 || 低コスト汎用応用、単電源回路、センサ信号の取得 |} </center> <br> <center> {| class="wikitable" |+ 高精度オペアンプの特性比較 |- ! オペアンプ !! 項目 !! 仕様・説明 |- | rowspan="5" | OP07 | GB積 || 0.6 [MHz] |- | 入力オフセット電圧 || ±75 [µV] (OP07E) |- | オフセット電圧ドリフト || ±2 [µV/℃] |- | 入力バイアス電流 || ±4 [nA] |- | 用途 || 精密計測、データ取得、DC信号の増幅 |- | rowspan="5" | OPA277 | GB積 || 10 [MHz] |- | 入力オフセット電圧 || ±10 [µV] |- | オフセット電圧ドリフト || ±0.1 [µV/℃] |- | 入力バイアス電流 || ±10 [nA] |- | 用途 || 高精度データ取得、計測器、精密電圧源のバッファ |} </center> <br> <center> {| class="wikitable" |+ 高速オペアンプの特性比較 |- ! オペアンプ !! 項目 !! 仕様・説明 |- | rowspan="6" | OPA627 | GB積 || 16 [MHz] |- | スルーレート || 55 [V/µs] |- | 入力オフセット電圧 || ±0.8 [mV] |- | 入力バイアス電流 || ±30 [pA] |- | THD+N (全高調波歪み+ノイズ) || 0.00003[%] |- | 用途 || 高精度オーディオ、精密計測、高速信号処理 |- | rowspan="5" | AD8065 | GB積 || 145 [MHz] |- | スルーレート || 180 [V/µs] |- | 入力オフセット電圧 || ±1.5 [mV] |- | 入力バイアス電流 || ±0.6 [fA] |- | 用途 || 高速信号処理、RF応用、ビデオ信号の増幅 |} </center> <br> ==== オペアンプICの比較表 ==== 代表的なオペアンプICのスペックを以下の表に示す。<br> <br> <center> {| class="wikitable" |+ オペアンプIC比較表 ! IC名 !! GB積 !! スルーレート !! 入力オフセット !! 用途 |- | TL072/TL074 || 3 [MHz] || 13 [V/µs] || ±3 [mV] || オーディオ、汎用 |- | LM358/LM324 || 1 [MHz] || 0.5 [V/µs] || ±5 [mV] || 単電源、低コスト |- | OP07 || 0.6 [MHz] || 0.3 [V/µs] || ±75 [µV] || 精密計測 (DC) |- | OPA277 || 10 [MHz] || 0.8 [V/µs] || ±10 [µV] || 高精度計測 |- | OPA627 || 16 [MHz] || 55 [V/µs] || ±0.8 [mV] || 高精度オーディオ |- | AD8065 || 145 [MHz] || 180 [V/µs] || ±1.5 [mV] || 高速信号処理 |} </center> <br> オペアンプの選択は、以下の要件により決定される。<br> * 周波数帯域 (GB積) * 精度 (入力オフセット電圧、温度ドリフト) * 速度 (スルーレート) * コスト * 電源電圧 (単電源または正負電源) <br><br> == インピーダンス変換が必要な場面 == ボルテージフォロワのインピーダンス変換機能が必要となる代表的な場面を以下に示す。<br> <br> ==== 高インピーダンスセンサからの信号取得 ==== 高インピーダンスセンサは、出力インピーダンスが数[MΩ]〜数[GΩ]と極めて高い。<br> このようなセンサに低インピーダンスの負荷を直接接続すると、電圧降下により信号が歪む。<br> <br> 高インピーダンスセンサの例を以下に示す。<br> * ピエゾセンサ (圧力、振動の検出) *: 出力インピーダンス: 数[MΩ]〜数GΩ * pHセンサ (イオン選択電極) *: 出力インピーダンス: 数百[MΩ] * 高インピーダンス温度センサ *: 出力インピーダンス: 数[MΩ] <br> ボルテージフォロワをセンサの出力に接続することにより、センサに電流をほとんど流さずに信号を取得できる。<br> <br> ==== 計測回路における信号の取得 ==== 精密計測回路では、分圧抵抗やブリッジ回路から信号を取得する。<br> これらの回路は高インピーダンスであるため、直接ADコンバータに接続すると、ADコンバータの入力電流により電圧降下が発生し、測定誤差が生じる。<br> <br> ボルテージフォロワを挿入することにより、以下に示すメリットが得られる。<br> * 分圧抵抗の出力電圧を変化させずに取得 * ブリッジ回路の平衡を崩さずに信号を取得 * ADコンバータの入力電流による測定誤差を最小化 <br> ==== ケーブル駆動 ==== 長いケーブルは容量性負荷として作用し、信号の高周波成分を減衰させる。<br> ボルテージフォロワの低い出力インピーダンスにより、ケーブルの容量性負荷を駆動できる。<br> <br> これにより、以下に示すメリットが得られる。<br> * 長距離伝送時の信号劣化を抑制 * 高周波信号の減衰を最小化 * 信号の立ち上がり時間を維持 <br> ==== 複数の負荷への信号分配 ==== 1つの信号源から複数の負荷に信号を分配する場合、ボルテージフォロワを使用することにより、各負荷が信号源に与える影響を最小化できる。<br> <br> これにより、以下に示すメリットが得られる。<br> * 負荷の追加や削除が他の負荷に影響しない * 各負荷に安定した電圧を供給 * 信号源の過負荷を防止 <br><br> == 応用例 == ボルテージフォロワの代表的な応用例を以下に示す。<br> <br> ==== センサ回路のバッファ ==== 高インピーダンスセンサの出力をボルテージフォロワでバッファリングする。<br> <br> ピエゾセンサのバッファ<br> * ピエゾセンサの出力インピーダンスは数[MΩ]〜数GΩと極めて高い * ボルテージフォロワをセンサの直後に配置し、低インピーダンス化 * 後段の増幅回路やADコンバータに信号を伝達 <br> pHセンサのバッファ<br> * pHセンサ (イオン選択電極) の出力インピーダンスは数百[MΩ] * FET入力オペアンプ (TL072など) を使用したボルテージフォロワで信号を取得 * 低インピーダンス化した信号を増幅回路に送る <br> ==== ADコンバータの前段 ==== ADコンバータの前段にボルテージフォロワを配置することにより、以下に示すメリットが得られる。<br> <br> * 高インピーダンス信号を低インピーダンス信号に変換 * ADコンバータの入力電流による電圧降下を防止 * 測定精度の向上 <br> 特に、サンプリング時にADコンバータの内部容量が瞬間的に充電されるため、信号源に瞬間的な電流が流れる。<br> ボルテージフォロワがこの電流を供給することにより、信号源への影響を最小化できる。<br> <br> ==== アクティブフィルタの出力段 ==== アクティブフィルタ (ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ) の出力段にボルテージフォロワを配置する。<br> <br> これにより、以下に示すメリットが得られる。<br> * フィルタ回路の出力インピーダンスを低減 * 後段の負荷によるフィルタ特性の変化を防止 * 積分回路やフィルタ出力の安定化 <br> ==== オーディオ回路 ==== オーディオ回路では、信号の劣化を防ぐためにボルテージフォロワが使用される。<br> <br> プリアンプ<br> * マイクロフォンやギターピックアップの高インピーダンス信号をバッファリング * 低インピーダンス化した信号をメインアンプに送る <br> ヘッドフォンアンプ<br> * DAC (Digital-to-Analog Converter) の出力をバッファリング * ヘッドフォンを駆動するための電流を供給 <br> ==== 精密電圧源 ==== 分圧抵抗や基準電圧源の出力をボルテージフォロワでバッファリングする。<br> <br> これにより、以下に示すメリットが得られる。<br> * 負荷電流による電圧降下を防止 * 基準電圧の安定化 * 複数の回路に基準電圧を供給 <br><br> == 設計時の注意点 == ==== 発振対策 ==== ボルテージフォロワは、100[%]の負帰還 (帰還率 β = 1) のため、発振しやすい回路構成である。<br> <br> 発振の原因<br> * 100[%]の負帰還により、わずかな位相遅れでも不安定になりやすい。 * オペアンプに複数のポール (周波数特性の折れ点) がある場合、高周波で合計180°の位相遅れに達する可能性がある。 * 容量性負荷 (ケーブルの容量など) によるローパスフィルタ効果により、位相遅れが発生 <br> 対策1: ユニティゲイン対応オペアンプの選択<br> * データシートに "Unity-Gain Stable" または "Stable at Gain = 1" と明記されたオペアンプを選択 * これらのオペアンプは、ゲイン1でも安定動作するように内部補償されている。 <br> 対策2: 出力のRC補償<br> * オペアンプの出力端子と負荷の間に小さな抵抗 (数十Ω〜数百Ω) を挿入 * この抵抗により、容量性負荷によるポールが高周波側に移動し、位相余裕が確保される。 <br> 対策3: フィードバックパスの補償<br> * 反転入力端子とグランド間に小容量のコンデンサ (数pF〜数十pF) を接続 * 高周波での利得を低下させ、発振を抑制 <br> ==== 容量性負荷への対応 ==== 容量性負荷は、オペアンプの出力インピーダンスと組み合わさってローパスフィルタを形成し、位相遅れを引き起こす。<br> <br> 容量性負荷の例を以下に示す。<br> * 長いケーブル (数pF/m〜数十pF/m) * 後段回路の入力容量 * プリント基板のパターン容量 <br> RC補償の手順<br> # オペアンプの出力端子に抵抗 Rout (数十[Ω]〜数百[Ω]) を直列に挿入する。 # 抵抗 Rout と容量性負荷 Cload により形成されるポール周波数が、オペアンプのGB積より十分高くなるように設定する。 #: <br> # ポール周波数の計算式を以下に示す。 #: <math>\mbox{fpoll} = \dfrac{1}{(2 \pi \times \mbox{Rout} \times \mbox{Cload})}</math> #: <br> # この周波数がGB積の10倍以上になるように Rout を選択する。 <br> ==== 非理想特性の影響 ==== 実際のオペアンプは、理想オペアンプとは異なる非理想特性を持つ。<br> これらの特性がボルテージフォロワの性能に影響する。<br> <br> スルーレートの制限<br> * スルーレートは、オペアンプの出力電圧が変化できる最大速度 (V/µs) を表す * 急峻な入力信号に対して、出力が追従できず、波形が歪む * 対策: 高速オペアンプ (高スルーレート) を選択 <br> 入力オフセット電圧<br> * 入力端子間の電圧差がゼロでも、出力に微小な電圧が現れる * ボルテージフォロワでは、このオフセット電圧がそのまま出力に現れる (増幅されない) * 対策: 高精度オペアンプ (低オフセット電圧) を選択、またはトリミング <br> 入力バイアス電流<br> * オペアンプの入力端子に流れ込む微小な電流 * 高インピーダンス回路では、この電流による電圧降下が誤差になる * 対策: FET入力オペアンプ (低バイアス電流) を選択 <br> GB積の制限<br> * ゲインが1倍のため、ボルテージフォロワの帯域幅はGB積とほぼ等しい。 * 例 *: GB積が1 [MHz]のオペアンプでは、約1 [MHz]までの信号にしか対応できない。 * 対策 *: 高GB積のオペアンプを選択する。 <br><br> == トランジスタによるボルテージフォロワ == オペアンプ以外に、トランジスタを使用したボルテージフォロワも存在する。<br> これらは、よりシンプルな回路構成で実現できるが、性能面ではオペアンプ版に劣る。<br> <br> ==== エミッタフォロワ ==== エミッタフォロワは、バイポーラトランジスタを使用したボルテージフォロワである。<br> <br> 回路構成<br> * ベース (B) に入力信号を接続 * コレクタ (C) を電源 VCC に接続 * エミッタ (E) を出力として取り出す * エミッタとグランド間に負荷抵抗またはプルダウン抵抗を接続 <br> 動作原理<br> * ベース-エミッタ間電圧 Vbe は約0.6V (シリコントランジスタ) で一定 * 入力電圧が変化すると、エミッタ電圧も追従して変化 * Vout = Vin - Vbe <br> 特徴<br> * 入力インピーダンス: 数kΩ〜数十kΩ (オペアンプ版より低い) * 出力インピーダンス: 比較的低い * ゲイン: ほぼ1倍 (厳密には1未満) * 電圧ドロップ: Vbe (約0.6V) の電圧降下が発生 <br> 制限事項<br> * Vbeドロップにより、出力電圧が入力電圧より約0.6V低くなる * 入力バイアス電流が比較的大きい (数十nA) * 精度はオペアンプ版より劣る (1[%]程度) <br> 用途<br> * 低コスト、シンプルな回路 * 高速応答が必要な回路 * 単電源動作 <br> ==== ソースフォロワ ==== ソースフォロワは、MOSFET (Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor) を使用したボルテージフォロワである。<br> <br> 回路構成<br> * ゲート (G) に入力信号を接続 * ドレイン (D) を電源 VDD に接続 * ソース (S) を出力として取り出す * ソースとグランド間に負荷抵抗またはプルダウン抵抗を接続 <br> 動作原理<br> # ゲート-ソース間電圧 Vgs により、ドレイン-ソース間電流が制御される。 # 入力電圧が変化すると、ソース電圧も追従して変化する。 #: <math>\mbox{Vout} = \mbox{Vin} - \mbox{Vgs}</math> <br> 特徴<br> * 入力インピーダンス *: 極めて高い。(1[TΩ]以上) * 出力インピーダンス *: 低い * ゲイン *: ほぼ1倍 (厳密には1未満) * 電圧ドロップ *: Vgs (約1〜2 [V]) の電圧降下が発生 * バイアス電流 *: ほぼゼロ (リーク電流のみ、[fA]オーダー) <br> 制限事項<br> * Vgsドロップにより、出力電圧が入力電圧より約1〜2[V]低くなる。 * 精度はオペアンプ版より劣る。(1[%]程度) <br> 用途<br> * 高インピーダンスバッファ * 高速応答が必要な回路 * 低ノイズ回路 <br> ==== 3つの実装方式の比較 ==== オペアンプ版、エミッタフォロワ、ソースフォロワの特性を以下の表に示す。<br> <br> <center> {| class="wikitable" |+ ボルテージフォロワの実装方式比較 ! 特性 !! オペアンプ版 !! エミッタフォロワ !! ソースフォロワ |- | 入力インピーダンス || 1[TΩ] (FET型) || 数kΩ〜数十kΩ || 1[TΩ]以上 |- | 出力インピーダンス || 数[Ω]〜数十[Ω] || 数十[Ω]〜数百[Ω] || 数十[Ω]〜数百[Ω] |- | 電圧ドロップ || 0[V] || Vbe (約0.6[V]) || Vgs (約1〜2[V]) |- | 精度 || 0.1[%]以下可能 || 1[%]程度 || 1[%]程度 |- | バイアス電流 || fA〜pA || nA (数10[nA]) || fA (リークのみ) |- | 回路の複雑さ || 中程度 || シンプル || シンプル |- | コスト || 中〜高 || 低 || 低〜中 |- | 用途 || 精密バッファ || 高速、低コスト || 高インピーダンス |} </center> <br> オペアンプ版は、最も高精度で電圧ドロップがないため、精密計測や高性能バッファに適している。<br> エミッタフォロワとソースフォロワは、シンプルで低コストだが、電圧ドロップが発生するため、精度が要求される用途には適さない。<br> <br><br> == 参考文献 == * [https://www.ti.com/lit/ds/symlink/tl072.pdf Texas Instruments - TL072 データシート] * [https://www.ti.com/lit/ds/symlink/lm358.pdf Texas Instruments - LM358 データシート] * [https://www.ti.com/lit/ds/symlink/opa277.pdf Texas Instruments - OPA277 データシート] * [https://www.ti.com/lit/ds/symlink/opa627.pdf Texas Instruments - OPA627 データシート] * [https://www.analog.com/media/en/technical-documentation/data-sheets/OP07.pdf Analog Devices - OP07 データシート] * [https://www.analog.com/media/en/technical-documentation/data-sheets/AD8065.pdf Analog Devices - AD8065 データシート] <br><br> {{#seo: |title={{PAGENAME}} : Exploring Electronics and SUSE Linux | MochiuWiki |keywords=MochiuWiki,Mochiu,Wiki,Mochiu Wiki,Electric Circuit,Electric,pcb,Mathematics,AVR,TI,STMicro,AVR,ATmega,MSP430,STM,Arduino,Xilinx,FPGA,Verilog,HDL,PinePhone,Pine Phone,Raspberry,Raspberry Pi,C,C++,C#,Qt,Qml,MFC,Shell,Bash,Zsh,Fish,SUSE,SLE,Suse Enterprise,Suse Linux,openSUSE,open SUSE,Leap,Linux,uCLnux,電気回路,電子回路,基板,プリント基板 |description={{PAGENAME}} - 電子回路とSUSE Linuxに関する情報 | This page is {{PAGENAME}} in our wiki about electronic circuits and SUSE Linux |image=/resources/assets/MochiuLogo_Single_Blue.png }} __FORCETOC__ [[カテゴリ:電子回路]]
オペアンプ - ボルテージフォロワ
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